陶葬はじまりは ひとつの珊瑚の死だった
もっとも、その珊瑚は彼女の手から滑り落ちて割れるよりも随分前に生物としての機能は失っていた そういう意味では、それは珊瑚が経験する二度目の死だった 置物としての死 或いは、亡骸としての表象の喪失
あらゆる機能や表象から解放されたその珊瑚の在り様は、ひどく純粋なもののように思われた それはもはや珊瑚というよりは、風化を待ち、やがて新たなかたちで世界に組み込まれるときを夢見て眠りにつく、ふたかけらのカルシウムの塊に過ぎなかった 考えてみれば、わたしたちの身体をかたちづくっている炭素や、酸素にしたって それはどこからか巡ってきたもので やがてどこかへ巡っていく種類のものなのだ 隕石や人工衛星を除けば、地球上の重元素の数は、そのはじまりから増えも、減りもしていない かたちあるものはすべて 疑いようもなく循環の只中にある
私にとって焼成とは、その永遠性に接近することを可能にする、観測装置のようなものかもしれない - - - 陶葬は、提供者から譲り受けた<壊れてしまった記憶の品>を粉砕し、釉薬の着色剤として再利用したうつわのシリーズである。
| ![]() 珊瑚 #1 | ![]() 珊瑚 #2 | ![]() 珊瑚 #3 | ![]() 珊瑚 #4 | ![]() 燭台 #1 | ![]() 燭台 #2 | ![]() iPhone4 #1 | ![]() iPhone4 #2 | ![]() 軍用水筒 #1 | ![]() 軍用水筒 #2 | ![]() アクセサリー #1 | ![]() アクセサリー #2 |