The Blues And The Abstract Truth

by 瀬川辰馬

1961年2月に録音されたオリバー・ネルソンによるジャズアルバム”The Blues And The Abstract Truth”には『ブルースの真実』という邦題が付いているが、これはあまり優れた訳だとは思わない。
例えば、1966年の作品”Sound Pieces”に収録されている”Patterns”の、揺らぎながら循環をつづけるあのテーマの響きのように、彼の音楽のなかでは、透徹した幾何学と、人間的な表情の豊かさとが、自然なありかたで同居している。

それは、ブルース<の>真実というよりは、意思を持って、ブルース<と>真実、と呼ぶべき並行のように思える。

うつわという道具の根源的な機能を、自分なりに言い表そうとするとき、彼の矛盾したその音楽が頭のなかで鳴る。

うつわは、それを握るものの悦びのためにあるのと同時に、それに抱きとめられるものへの祈りのためにあると思う。

うつわには、生きているものは入れられない。
植物にしろ動物にしろ、自然から刈り狩られることで、はじめてそれをうつわのなかに抱きとめることができる。ひとは日に三度、そのちいさな棺を握ることで、自らの生を繋いでいく。

僕は、食べるもののためだけにつくられたうつわを傲慢だと思うし、また食べられるもののためだけにつくられたうつわを寂しいと思う。

あたたかでうつくしい食卓に感じる、ひととしての生の悦び。
熱量となって循環される、抱きとめられた生への公正な畏敬。

ブルース・”アンド”・アブストラクト トゥルース

それらが自然なかたちで並行する、ひんやりとあたたかなうつわをつくりたい。

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瀬川辰馬 陶展 “The Blues And The Abstract Truth”

Gallery Forgotten Dreams
〒135-0021
東京都江東区白河1-3-21 2F

3月26日(土)~ 4月17日(日)/ 12:00 ~ 19:00(月・火休)

作家在廊日
3/26(土) 17:00〜19:00
4/6(水)  15:00〜19:00
4/14(木) 15:00〜19:00