ひとなるものの彼方には
カジミール・マレーヴィチが『白の上の白』を発表したのは1918年のことで、その制作時期はロシア革命とほぼ時を同じくしている。 既成秩序が音を立て崩れていくなかで、ものをつくる人間として興味を持つ先が意味より知覚に向かっ […]
カジミール・マレーヴィチが『白の上の白』を発表したのは1918年のことで、その制作時期はロシア革命とほぼ時を同じくしている。 既成秩序が音を立て崩れていくなかで、ものをつくる人間として興味を持つ先が意味より知覚に向かっ […]
作家として活動を始めたばかりの頃、国内でも指折りの有名ギャラリーの店主の方と、少しだけお話をさせて頂く機会があった。 〇〇さんがこれは良い物だと思うときの判断の基準はどんなものなんですか?と質問をすると、良い物は道端に転 […]
この数日、東京は水彩絵具で描いたような秋晴れがつづいていて、最寄りのコンビニにたばこを買いに行くつもりでちょっと外に出ると、日差しと風があまりにも気持ちよく、つい二つ三つ遠くのコンビニまで散歩でもしようかなという気分にな […]
初夏には永遠はありふれたもの ビル街で出会うモンシロチョウ 朝の待合室で流れるゴルトベルク 境内の木陰で買い求めるレモネード ポールオースターのなにかの小説で、夏の光は事物を区別するのではなくむしろ曖昧にする、という一文 […]
梅雨の時期になると、思い出したように聞きたくなる音楽がいくつかある。 mono fontanaというアルゼンチンの音楽家の”cribas”という作品は自分にとってその筆頭なのだけど、何年間もタイトルを、氷河のあの裂け目の […]
冬の終わりの匂いがし始めると、僕らはまた一年を生き延びたことについて、そこかしこで小さな乾杯をする。 常温でゆっくりと解凍されていく冷凍商品のように、からだの内側にも外側にも少しずつ水分が溢れはじめ、それがやがて空気のな […]
年末らしく人と会う機会が多く、話しながら一年を振り返っていると、今年自分に訪れた最大の変化は音楽を再び聴くようになったことだなと思う。 きっかけは、いまは離れたところに住む古くからの悪友に会った際に、少し遅れた誕生 […]
最近、寺尾紗穂さんの歌をよく聴いている。 はじめて聴いた彼女の歌は、当時仲のよかった少し年上の友人に教えてもらった『アジアの汗』だったから、もう10年近く前になる。 フィリピンや、マレーシアから日本に出稼ぎにやってきた外 […]
出鱈目に忙しい7月だった。 「忙」という字は心を無くすと書く、なんてクリシェがあるけどあれはちょっと違うと思う。 たったひとつのことだけ考えて、寝食も忘れて没頭しているような忙しさのなかで、むしろ心は冴え渡っ […]