Clear Spot
by 瀬川辰馬
出鱈目に忙しい7月だった。
「忙」という字は心を無くすと書く、なんてクリシェがあるけどあれはちょっと違うと思う。
たったひとつのことだけ考えて、寝食も忘れて没頭しているような忙しさのなかで、むしろ心は冴え渡って、視界は自分でもひやっとするくらいクリアになっていく。
浅草のギャラリーに追加納品を終えた帰路、シャッフル再生のカーステレオからキャプテンビーフハートの”Too much time”が流れてきた。
何度となく聴いてきたはずの塩辛い歌声が、夏の光のなかで特別に親密なものに聴こえた。
アルバムタイトルがClear Spotだったことを思い出す
おれもそこに居る、と思った