by 瀬川辰馬

冬の終わりの匂いがし始めると、僕らはまた一年を生き延びたことについて、そこかしこで小さな乾杯をする。

常温でゆっくりと解凍されていく冷凍商品のように、からだの内側にも外側にも少しずつ水分が溢れはじめ、それがやがて空気のなかに小川をつくる。

「3月の水」が生まれたのは南半球でのことで、つまり厳密には僕らにとってそれは9月の水な訳だが、それでもあの美しい詩を動物が、植物が、鉱物が歌いはじめるのは、いつだって春が近づく頃のこと。

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